『アンダー・グラウンド』
『ライフ・イズ・ミラクル』『黒猫・白猫』のエミール・クストリッツァ監督の1995年の映画。
彼の祖国である旧ユーゴスラビアの、第二次世界大戦からユーゴ内戦、そして国の消滅までを描いたもの。
「昔、ある所に国があった」のテロップが流れ、
酔っぱらったマルコとクロが、金を撒き散らしながら、楽団を引き連れて馬車で走るというオープニングから始まる。大騒ぎ(笑)
「第1章 戦争」
時は1941年、ユーゴはナチスの攻撃を受けていた。パルチザンのマルコは、戦火を逃れ、動物園で働く弟のイヴァン、親友のクロら仲間たちを地下の広大な隠れ家にかくまう。
戦争で町に爆弾が落とされているにも関わらず、娼婦としてたり、ご飯食べていたりと、破天荒なマルコとクロに笑ってしまう。
戦争中なんだけど、なんとも明るい。
高田純次みたいな、適当で軽いマルコが良い味出してる(笑)
笑いと喧騒の迫力。
「第2章 冷戦 」
20年の月日が流れた。
マルコは、地上で政治的にのしあがり、パルチザンの英雄となっていた。マルコ・クロ共に恋をしていた小悪魔ナタリアと結婚。
戦争は終わっているにも関わらず、「チトーと共に戦おう」と決起させ、あたかも戦時中かのように彼らをだまし、武器をつくらせて金を儲けていた。
クロの息子ヨヴァンの結婚式で、ついにマルコとナタリアの関係が、クロにばれてしまう。
そして、チンパンジーの打った大砲により穴があき、クロとヨヴァン、イヴァンは外へと飛び出すのだ…
「第3章 戦争」
1992年。
内戦真っ只中。イヴァンが知る真実。
ネタバレゆえ割愛。
ラスト、もう鳥肌と涙がとまらなく……すごいの一言しか言えない。悲と楽の融合。
地下での結婚式のシーンが素晴らしい‼‼
浮遊する花嫁(人力で浮く仕掛けになってる)、鳴り響くロマの音楽、高速回転する楽団、ボール遊びする子供、幸せに涙する花嫁、戦車、チンパンジー、
奇妙で楽しくて幻想的で陽気で笑いにあふれ、混沌と音楽と戦争と死がすべて混在しつつも、絶妙にバランスがとれていて。
まさしくこの映画の全てを表したようなシーンだった。
太陽も象徴的。
マルコ・クロ・ナタリアが頭をくっ付けぐるぐる回りながらうたう「月は真昼に照り、太陽は真夜中に輝く、真昼の暗黒を誰も知らない、太陽の輝きを知らない」はまさしくユーゴの人々と地下の人々の事であるし、この3人の事を表しているようにも思える。友情・裏切り・愛。
初めて太陽を見た時のヨヴァンの表情が独特だった。
クロの「太陽はもう沈んだ、月も消えた」のセリフも。
3時間近い映画だから、ストーリーも軸しか書いてないし、盛りだくさんでぎゅうぎゅう詰めの映画。
全く退屈せず、興奮冷めず。
地下の人々は、虐げられたユーゴの民衆そのものである。
今はなくなってしまったユーゴスラビアという国。
最後はイヴァンの「昔、ある所に国があった この物語に終わりはない」
星5越え
最高‼
楽団の騒がしい音楽がいつまでも耳にと心に残る……