ビール片手に映画ナイト☆オブ・ザ・デッド

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『mommy マミー』

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『mommy』
『トム・アット・ザ・ファーム』『わたしはロランス』のグザヴィエ・ドラン監督。
2014年 カナダ映画

昨日見てきました。at 新宿武蔵野館



架空のカナダ。障害のある子供を持つ親に身体的精神的金銭的困難があったね場合、法的措置なしに施設に子供をいれることの出来るという法ができる…

ダイアン(アンヌ・ドルヴァル)。46歳。見た目はケバく、気も荒い。夫の死後、ひとりで生活していたところ、ADHDで施設に入っていた一人息子のスティーヴ(アントワーヌ・オリヴィエ・ピロン)が放火をおこし、施設から追い出される。注意欠如・多動の障害のあるスティーヴは、時おり衝動を抑えられず暴力的になってしまう。
さらに、ダイアンは職を失い…
そんな時、向かいに最近越してきたカイラ(スザンヌ・クレヴァン)という女性と二人は知り合う。彼女は休職中の教師で、数年前から吃音症を煩い、うまく話せない。
それぞれに問題のある3人は、お互いに欠如しているものを埋めるように差さえあって生きていくのだが…


素晴らしい「母」と「息子」の愛の映画でした。
っていうと単純な愛の物語のように聞こえるけれど、全然違います。
時おり激しくぶつかりあう二人。
そこに垣間見れる、相手への愛。
父親の不在から、二人ともに不完全ながら「父」でもあろうとし苦悩したりも。
障害故に愛されているのか不安に陥ったり、うまくバランスのとれないスティーヴ。
しかし、母の愛はこの世の中で揺るぎないものだとひしひしと感じる。
ラストにダイアンのとった行動は希望のためのものであり、本当の愛があるからこそだと思う。
そして、スティーヴの最後の疾走もまた母への想いである。

「ママはいつか僕を愛さなくなる」
「あなたの愛が別のところにむいても、私は愛し続けるわ」
「私たちには愛しかないでしょ」
そういった一見ベタなセリフでも、状況とタイミングと映像センスで、臭くならずに心に染み渡る。

カイラはどうやら幼い息子を失ったようで、しかしこの親子を見つめる眼差しは暖かく、彼女がいることで二人は成長し、カイラもまた本来の自分と自信を取り戻す事ができるのだ。
カイラとスティーヴ、カイラとダイアンの関係も、疑似親子であり親友であり、深く深く繋がっていく。


1:1の真四角のアスペクト比で写し出される画面。これは「個人」というものに焦点を当てているからだと思う。ひとりのアップが目立ち、その心情に注目せざるおえなくなる。なおかつ、その圧迫感から息苦しさも感じ…

でも、その圧迫感が解き放たれるシーンが2回あって、画面がワイドに広くなります。

まず、スティーブがスケボーで道路を走り、その横でダイアンとカイラが自転車でおいかける。手を伸ばし、空中を開くようなポーズをとるスティーブの手の動きと共に画面が横に伸び、世界が一気に広がる。
ティーブの心の解放と、3人で歩んでいく希望に満ちたシーン。美しい光。青空。
そこで流れるoasisのwonderwall。
「僕を救えるのはひとりしかいない。そしてその人はあなたなんだ。色んなものから守ってくれる、あなたが僕の魔法の壁なんだ。」
自由だ‼と叫ぶスティーヴ。
目頭が熱くなりました…素晴らしかった。

そして、2つ目はピクニックに出た3人。幸せな時間からの、スティーブンの輝かしい未来でぐっと広がる。ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、ぼやける人物像・儚げな煌めき・壮大で美しいが緊張感のある音楽。

スローモーションも多用し、光の美しさと音楽とともに彼らの気分の高揚や喜びなどがじっくりと感じられます。


この映画、女性の強さも感じました。出てくる男は皆、いやらしいことばかり考えているような下衆の極みみたいに描かれていて、男性社会での中で生き抜く大変さも感じた。
ゲイであるドラン監督は、差別やゲイの社会的地位から、女性と同じように男性優位社会をみているのだと。


エンディング曲
Lana del Rayの“born to die”
死ぬ為に生きる、死にむかって生きて行くって、これをラストにもってくるのが鳥肌がたつ。
しかも、一番最初に施設から出される時にダイアンがするサインが「D.i.e」… そこのシンクロも響く。


どんな環境の中でも希望はある…

が…
果たしてこの社会の中でADHDという障害がどこまで受けいられるのであろうか…
未成年ならまだしも…
そういった意味で、ハッピーエンドでありバッドエンドであり、続いていく未来の先にあの幻想はあるのかと考えざるおえない。


愛があってもだめなものはだめだけれど、けれども親子の愛はゆるぎないし、愛し続けるのだ。

やっぱり愛なんだと思う…愛を知らなければ希望や未来への夢は描けない… 母親に愛されているってことは、生きている価値がある事、産まれてきて良かったんだって思う事…
だからこそ、この母親のダイアンの、反発しながらも困りながらも愛し続ける感情が素晴らしく美しい。

25歳でこれを撮れるドラン監督、すごいな…
母でもないのに、母親の気持ちを表現できている。
それは上っ面なものではなく、綺麗事でもない。
実際に障害のある子供を持つ母親はこの映画よりももっともっと苦悩するだろう。
でも、これは苦悩の映画ではなく、愛の映画なのだ。
だから、いいのだ。
最初はけばくてがさつなダイアンがだんだんと、見た目ではなく本質的な美しさを感じる事ができるのだ。

映像で心情を表現する手腕も素晴らしいし、音楽もすべて良い。


星5


映画の前に、『グザヴィエ・ドランのスタイル』という短編が流れました。
独特のアングルで生み出される効果、色々計算されてるんだなぁ…

重いテーマなんだけど、それが重くなくサラッと見れるのは、敢えて感情移入させない監督のアングルと、どんな面白い映像テクニックを持ってくるのかなっていう楽しみと、ここでこの音楽を使うんだ‼っていう面白さと、その曲の歌詞の一致であると思うのです。

https://youtu.be/ruDLTopeR0k



Oasis-wonderwall
https://youtu.be/bx1Bh8ZvH84

Lana del Ray-born to die
https://youtu.be/Bag1gUxuU0g

『トム・アット・ザ・ファーム』↓
http://mikimickle.hatenablog.com/entry/2015/05/30/001459

『マイ・マザー』↓
http://mikimickle.hatenablog.com/entry/2015/06/07/210441
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