ビール片手に映画ナイト☆オブ・ザ・デッド

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『マイ・マザー』

マイ・マザー Blu-ray
『マイ・マザー』
グザヴィエ・ドラン監督が19歳の時の初監督自主映画。


母と僕は昔は仲がよかったのに。母は母親には向いていない人なんだ。そして僕は息子に向いていないんだ……
そんな、16歳のユベールの、母とのぶつかり合いと痛々しい反抗期の話。ドラン監督の半自伝的作品。


ユベールは母親のすることなすこと、気に入らない。ださい服のセンスも汚い食べ方も話し方も。
家具や絵もどきついアニマル柄で、芸術家肌のユベールのセンスとは合わない。


対比されるのはユベールの彼氏アントナンの家。
同じく母子家庭だが、息子は母親の恋愛に寛大、母は息子と友達のような関係。部屋は光に満ち溢れ、センスの良い絵やポスターが飾られている。
アントナンと彼の母との楽しげで自由な会話を見ている時のユベールの表情が絶妙だった。なんで僕の家はこうじゃないんだろう…って。

ユベールの母は、気分や都合によって意見が変わり、テレビやラジオに夢中でユベールの話も聞かず(敢えて聞いてないのだと思う)、車で言い争いをして道に置いてぼりにするような、正直言って良い母ではなく、二人は激しいケンカを繰返す。何度も。

ユベールは母親を殺したいほど憎んでいる。
10代特有のナルシズム・身勝手さ・漠然とした苛立ち、それらが全て母への怒りとして吐き出される。

しかし、その一方で母を愛したい、好きになりたいという気持ち。
例えば、アントナンの母親に夕食に誘われても、母との食事を優先する…母と一緒にいてもケンカしかしないくせに… ケンカをしてもまた近づこうとする。母の為に食事をつくったり。
寄宿舎に入れられてしまい、もう大人になるまで二度と会わないと怒鳴っても、ドラッグでラリりながら母への本当の気持ちを伝える。

一瞬、血の涙を流す聖職者の格好をした母の姿がうつるシーンがある。幻想的。それを思い描いたユベールは、滅茶苦茶にした母のベッドを元に戻すのだ…


母もまた、女手ひとつで彼を育ててきた。その怒りが爆発する、寄宿舎の校長との電話のシーン、良かった。


そして、母が棺桶に入っているシーン。
この映画の原題『J'Al TUE MA MERE』は「僕は母を殺 した」。実際に母は死んだわけではない。殺 したわけでもない。
ユベールは、心の中で、母親と決別したのだ……
親離れ。交わらない平行線。

ラストの夕暮れの川沿いのシーンの煌めき……



私は反抗期というものが無かった。だから、最初、母に反抗するユベールが怖いって思ったんだけど、彼の母への複雑な気持ちと、母の酷さを見ていたら、ユベールに感情移入するようになった。
私もケンカはした。そのケンカの後半で思うのは、「私はママの事が好きで、バカになんかしてない‼わかってよ‼」っていう事ばかりだった。その時の気持ちをすごく思い出した…
愛されたいんじゃなくて、愛したいんだって。


冒頭の「母親への愛は無意識であり、親離れの時に初めてその根の深さを知る」っていうモーパッサンの言葉と、ユベールの教師(スザンヌ・クレマン)の言う、コクトーの「母親は息子の友達にはなれない」が効果的。


映像の点でいえば、家のシーンは基本的に夜で陽があたらず薄暗い。(母との関係を取り戻そうとし、関係が良くなると同時に朝の部屋になり、明るくなったりする。)
母がパンを食べるにしても、口元がアップでスローモーションになり、口のまわりについたクリームが汚く感じる。ユベールの嫌悪感がすごいでてた。
会話している時、一人ずつ写すカットも、人物を端によせて余白を作る事で、二人の距離感が出ていた。
ユベールの自白のような語りのアップはモノクロになり、ドキュメンタリーのようになる。
幼き時の思い出は幻想的で煌めき、現実との対比を感じた。
アントナンとの同性愛の絡みは、ペンキで汚れた二人を真上から映し、早送り・コマ送りのようになり、独特で面白かった。


透明感のある選曲も見事にあっていた。


19歳という若さでこれをとるドラン監督の才能を改めて思わされた。
けど、これは若くなければ撮れないものだ。
そして演じる事もできない。
この、ヒリヒリチクチクする感じ。


星4.5

『Mommy マミー』
この映画で親離れと心の決別を描いたあとに、また母と向き合い、今度は母の目線でこの作品を描いたのだと思うと感慨深い。
http://mikimickle.hatenablog.com/entry/2015/06/02/203254

『トム・アット・ザ・ファーム』http://mikimickle.hatenablog.com/entry/2015/05/30/001459
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