ビール片手に映画ナイト☆オブ・ザ・デッド

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レヴェナント 蘇えりし者

レヴェナント:蘇えりし者 2枚組ブルーレイ&DVD(初回生産限定) [Blu-ray]

『レヴェナント 蘇りし者』
原題『The revenant』

19世紀西部開拓時代のアメリカ北西部。
ネイティブアメリカンの妻を持ち、先住民と暮らしていたグラス(レオナルド・ディカプリオ)は土地勘に強く、今は毛皮の狩猟隊の案内人を勤めていた。
ある時、その隊が先住民に襲われてしまう。命からがら数名が生き残ったものの、隊の本拠地へ向かう途中でグラスはハイイログマに襲われてしまい瀕死の状態に… 彼を助けようとしていた隊長のヘンリー(ドーナル・グリーソン)だったが、余命僅かなグラスを、グラスの息子と、彼を尊敬する若者ジム(ウィル・ポールター)と、金銭目当てのフィッツジェラルド(トム・ハーディー)の3人に託していくことに。
が、グラスを快く思っていなかったフィッツジェラルドの行動により、彼は置き去りにされ、更には目の前で最愛の息子を殺されてしまう…

実在したマイケル・パンクの自伝を元に描かれた作品。

生き延びたグラスが、死の底からはいだして、“復讐”という信念だけを持ちながら、極寒の森林をサバイバルしていくというもの。


まず、今作で念願のアカデミー主演男優賞を獲得したディカプリオの演技は、本当に素晴らしいものでした。
喉を熊にやられているため、台詞はほとんどありません。が、表情と行動で見せるその圧倒的迫力は鬼気迫るものです。
監督は、今回で『バードメン』に続き2連続で監督賞をとったアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ。彼はかなりストイックな監督でもあります。
過酷なロケ、過酷すぎる演出。それに耐えてリアルにあんな事やこんな事までしたディカプリオ。このあんな事やこんな事は、ぜひ見ていただきたい‼ まぁ、ほんと、よく頑張ったねと言わざるを得ないです。

というか、これまでも様々な役柄を体当たりで演じ続け、『ウルフオブウォールストリート』ではあんな醜態とか晒して…(笑) あのディカプリオのあの衝撃的な姿は忘れられない(笑) 今回も含め、よだれヘロヘロ俳優確定だわぁ…ほんと、おめでとう‼ 何度も立ち上がるグラスの姿は、まるでディカプリオそのもののような気がするのです。

悪役に徹したトム・ハーディーも素晴らしく悪役です‼ 『マッドマックス』でのかっこよすぎるトムが、あんな頭皮の、あんなクソでっていうだけで、マッドマックス好きにはたまらないのですが(笑)また追われてるし(笑) でも、その悪役である事も、きちんと理由があります。

で、復讐という信念の中で待ち受けるのは過酷すぎるサバイバルなのです。
が、単純な“復讐”と“サバイバル”な話だけではありません。
様々なメタファーが印象的に残りました…



以下、私の勝手な考察です。



例えば、常に画面に映る木々は“生命”なのだと思います。グラスの妻が語る詩が象徴するように「幹が揺らぐことはない」というのは揺るぎない精神と生命力と信念を表します。揺れる木々のシーンではその生命が危うくなったりします。
また、グラスの命を救うのは、時に木々の破片でもあります。

川の流れも象徴的です。オープニングで川の流れに逆らって進む足元から始まり、時に命を救い、その水は命の源でもあります。そして、ラストには深い意味をもつものとなります…
川は、川の神のみぞ知る逆らえない流れなのだと思います。

また、“蘇り”という面では、グラスが受け取った水筒には渦が描かれており、輪廻を彷彿とさせます。土の中、木で作られた小さな避難小屋、馬の胎内から出てくるシーンは、何度も生まれ変わるグラスと生まれ変わりそのものを表していると思います。
この輪廻の思想は、ネイティブアメリカンの信仰にもあるものです。

そして、それらは全て、自然の賜物でもあるのです。生きるも死ぬも…
自然の中で生かされる命を感じずにはいられません。

木・川・水・生きる物たち…全てのものに精霊と神があるという先住民の信仰が、この映画に非常に現されていると思います。

それを視覚的に魅せるのが、エマニュエル・ルベツキさんのカメラテクニックの素晴らしさ。3年連続撮影賞を取っているのも納得極まりありません‼
とにかくその美しさに目をみはります‼
極限まで登場人物のアップを撮り、そのままカメラを自然へと移す。臨場感と壮大さとを同時に感じます。長回しによって、まるでそこにいるかのような気分になります。
その撮影方法のため、ライトを使わずにほぼ全てを自然光で撮影しました。これは本当に大変な事です。よって、光の煌めきが本当に美しいです♪
アップになるシーンでは、その息づかいでレンズが曇ります。白く曇るレンズ→空の雲→パイプの煙というシーン、面白かったです♪
また、飛び散る血や雨なんかもレンズに着くので、臨場感もあるけれど、不意にカメラを意識してしまうのは、良し悪しかもしれませんが…w
熊のシーンは息を飲む以上の恐怖であり、自然の恐ろしさをひしひしと感じました。

また今作は、ネイティブアメリカンとの関係ももちろん語るべきテーマでもあります。
狩猟隊は彼らの地に勝手に入り込み、彼らと共に生きる動物を乱獲し、彼らの命を奪ってきました。いわば泥棒と同じものです。映画で描かれるのは、先住民と、彼らと、フランス軍との三つ巴です。舞台となったのは1823年。ちょうどモンロー宣言がでた時です。それなりに、侵略者である欧米と交易をおこなっていた先住民族ですが、そこには見下しと惨殺と拉致と凌辱とがあります。彼らが欧米人を襲うのは、至極当たり前の事であります。
愛するものを救うための行為でもあり、プライドを持ったものです。

この映画で良かったのは、一般的に先住民としてくくられる彼らが、種族ごとに特性があるという事を表した事。彼らの精神というものを表現したという事。
が、やはり白人目線(というかグラス目線)であり、そこの辺が分かりにくいと思います。輪廻においても、先住民の文化を知らなければ繋がらないものです。普通にみたら、とにかくすごい復讐劇で、サバイバル劇で、それをほぼスタントなしでやってのけたディカプリオすげぇ‼っていうものになってしまう事。それだけでももちろんすごいけれど。
ただ、ネイティブアメリカンの事をもっと知らしめてほしいというただの願望です。
ちなみに、頭の皮を剥ぐのも、元々は白人の文化からきたものだと言われています。

が、イニャリトゥ監督のその分かりにくさが良い所であり、思考を働かせてくてれ、面白いのです。
とはいえ、バードメンよりは断然解りやすいです。

他にも、これは息子との関係性を考えるものであったり、神をイメージさせる様々なシーン(荒廃した教会。浮かぶ妻など)も、そこにやはり木があったりして、どういう意味なのかを深く考えます…
たくさんのバッファローの頭蓋骨の山の幻想…悔恨、自責……
書くと長くなりすぎるのでやめますw


とにかく、様々な面で圧倒される映画であり、重苦しさを感じずにエンターテイメント性があり、美しい映像とその技術に目をみはり、何があっても立ち上がるグラスの生命力と信念と、またその“復讐”という信念の先にあるものと、
また、根底にあるネイティブアメリカンたちの心情を感じてくれたらいいなと思う作品でした。
観て、体感してほしいです。まさしく、体感。