ビール片手に映画ナイト☆オブ・ザ・デッド

↑このくまたんを押してもらうと、他のレビューが見れます。ホラー・サスペンス・コメディ・カルト・ミニシアター系を主にほぼ毎晩観ています♪ゾンビLove♪スプラッターLove♪音楽とかわいいもの、ビンテージものもLoveです♪ 過去に観た作品のレビューをゆっくりゆっくり他場所から移行しつつ、新しいのもアップしていくつもりです。なので時系列がめちゃくちゃですみません。

『コングレス未来学会議』

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戦場でワルツを』のアリ・フォルマンが、『惑星ソラリス』の原作者で知られるSF界の巨匠スタニフワス・レムの「泰平ヨンの未来学会議」を元に映画化。


女優ロビン・ライト(もちろん演じるのは本人)。かつては『フォレスト・ガンプ』などに出演して人気だったが今は落ち目。
ミラマウント社(ミラマックスとパラマウントが合わさった名前w)から最後の契約として求められたのは、彼女の全てをスキャンして、若かりし頃の姿で3DCGの俳優として映画を作っていくというもの。そのデータは会社の所有物となり、ロビンは一切の演技を禁じられる。
最初は断ったロビンだが、難病の息子を抱え、仕事のオファーも減った今、その契約にサインする事に。

20年後、ミラマウント社のコングレス未来学会議に招待された、ただの初老となったロビン。
ある薬を吸ってからのそこは、自分含め全てがアニメ化になり、奇妙な幻想世界だった。
目にしたのは3DCGで作られた若い自分が活躍する映画。虚構のロビン・ライトは一躍スターとなっていた。

そして、ミラマウントは新たな契約を持ちかける…
それはCGではなく、新しく開発した新薬によって…

そして更に20年後…
と、話は続いていきます。


前半は実写。
聴力・視力がだんだんと失われていく息子アーロンを抱えるロビン。
飛行機が大好きなアーロンのために、飛行場横の元飛行機格納庫を改装した家は、非現実的で夢があり素敵。
映像も美しく、アーロン手作りの赤い立体的な凧と青い空、白い飛行機。キラキラと輝く煌めき。この美しさがきちんとラストに向けて繋がっていくのです。

そして、CGに頼り、デジタル化している映画界の今と終わりを辛辣に風刺したものとなっています。
撮影監督がただのスキャナー係になっていたり。キアヌの名前も出てきます。(←これを許可したキアヌの懐の広さ、好き♪)
イスラエル・ドイツ・フランス・イギリス・ベルギー・ポーランドルクセンブルクの7ヶ国で作られた今作。アメリカ資本でないため、アンチハリウッド感がよくでています。


後半はアニメーションになります。
止めどなく押し寄せる溢れんばかりのイマジネーション‼
ドラッグのトリップのようであり(まぁ、ドラッグなんだけど)、幻想的で、理不尽で、不気味で、官能的で、楽しくも恐ろしい。
そんな夢と悪夢が入り交じった世界の中で、繰り返し見る悪夢。
なにが現実で何が悪夢なのか、見ている途中ではわからないので、脳内フル回転。
そしてその圧倒的世界観にみいってしまう。

ベティちゃんやポパイなどのアニメーター、マックス・フライシャーへのオマージュもあり懐古的であり、それでいて斬新なキャラクターや造形。
自分のなりたいような姿になっている人たちの見た目が楽しく、ピカソフリーダ・カーロなどの芸術家や、有名俳優たち、アニメキャラクター、はたまた独自性のある人など、それを見ているだけでも楽しい。マグリットの絵の人が気になった♪
トム・クルーズもある役で出てきます、多分(笑)


怪しげで艶かしい植物たち。
ロビンが出会う男とのあるシーン。印象的でした。


ロビンの歌う、ボブ・ディランの「Forever yong」。
彼女の願望と、CGで作られた若い虚像の自分。その虚無感。その歌声の儚さ。心が締め付けられ、思わず涙が溢れました。


そして、
虚構と空想のディストピア
産み出された偽物の虚像。
現実との差。
ドラッギーであり、有り得ない事ではない未来のディストピアを感じ、恐ろしくもなりました。



ラスト。今までの風刺から、全く違う着地点となり、涙がボロボロと…
作中に何度も出てくる「選択」という言葉。
彼女が最後に選択したもの、それは今まで間違った選択を繰り返してきた彼女の、演じる事を封印した彼女の、最も正しい選択なのです。



ロビン・ライトの静かな苦悩と諦めをまとった表情が素晴らしかった。アニメでもこの悲しみの表情が表現されていて、見ていて切なさがこみあげます。

マネージャー役のハーベイ・カイテル。彼が人生を語るシーンで泣かされた… 最高でした。

アーロン役のコディ・スミット=マクフィーのピュアな演技も良い。

医師役ポール・ジアマッティの台詞の良さ‼

ロビンの娘のサラ。サミ・ゲイル。彼女のエピソードもうるうるします。ショートカットだし、反体勢で、弟を愛し…と、自分と重ねあわせたりもしました。


決してお涙頂戴映画ではありません。全く。
楽しさとトリップが混ざる近未来ドラッグ映画かつ、映画界と現代社会の風刺映画かつ、家族の物語。

何度でも見返したい。そう思いました。
星4.5



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